映画『花と兵隊』をきかっけに、もう1冊未帰還兵の本を読んだ。
タイ、インドネシア、ベトナムに住む未帰還兵14人のインタビューがまとめられている。
タイ在住4人のうち3人は映画『花と兵隊』と、先日読んだ単行本『未帰還兵』にも登場するので、それぞれの取材者が引き出す話を意識しながら読む。
一方、インドネシアに残った未帰還兵は、実際の戦闘を経験しないまま終戦を迎えたところが、インパール作戦などに駆り出されたタイの未帰還兵とは大きく異なる。
当然、終戦後の過ごし方などもまったくちがい、さらにひとりひとりの生い立ちや、所属していた隊の状況などもさまざまで、全員の話がとても興味深かった。
どの人においても、戦中の教育を受けたうえで20歳前後で日本を出て、終戦時の強烈な体験、あるいは運命のいたずらなどにより、日本に帰らない選択をし、帰らないけれども日本への思いは捨てきれない、という共通項を持っているように感じる。
いまここで、戦争をよく知らない私が何かを書こうとすると、陳腐な表現しか浮かんでこないのが正直なところだ。
唯一の救いは、全員がそれぞれの場所で家族をもって暮らしてきたことだろうか。
映画『花と兵隊』の監督も、そんなふうに感じたのかもしれない。