先日、篤姫の籠がスミソニアン博物館で見つかったというニュースがあった。
この著者のいう、ある時代の蒔絵をほどこした漆芸品は大量に海外へ流出した、というのはこれか〜、と納得。
漆器ならともかく、漆芸品とは無縁の生活を送っている私だけれど、日本の優れた伝統工芸品の多くが海外へ行ったままで、国内に残されているものも修復がされていない、と聞かされると悲しい気分になる。
どうしてそのようなことになってしまったのか。漆芸品修復の活動の場を18年間海外に移していた著者の、日本的文脈から離れた説明には、説得力があった。
その説明や著者の持論に反対を唱える人もいるだろうと思うので、そちら側の意見も聞いてみたいが、芸術作品を見る日本人の目が、もっと鍛えられなければならないのは間違いなさそうだ。
漆芸品の制作行程や復元に関する技術的なことなども、まったくの素人ながらも興味深く読むことができた。