Sさんが私の家に来てごはんを一緒に作る時いつも、我が家の調理器具が小さいと笑う。
うちは2人家族だけど、Sさんの家だって、全員揃って4人、いつもはご両親ふたりなのだから、そんなに変わらないのになぁ、と思っていた。
しかし実際は、しょっちゅう誰かが来たり、誰かの家に行ったりで、いつも大所帯で食事をしている様子。なるほど、大きななべがいくつも必要なわけだ。
寝具もしかり。Sさん宅の寝室には驚くほどの布団と枕がしまってあった。
綿がパンパンに詰まったSさんのお母さんお手製の枕は、日本の座布団のように客人に供されるようだ。枕とゴザで、さあ、お気楽にと。また、たくさん作っておいて、お坊さんへのお布施にもするという。
お手製の敷き布団は、タイ・スタイルの幅の狭い折りたたみのもの。よく土産物店で売られているものだが、お昼寝用じゃなくて、れっきとした就寝用だったとは!
家自体は広いので、あの幅の狭さはタイ人の寝相の良さを物語るんだろうか。いや、蚊帳を釣るから、そのためか。
Sさんと私はひとつの蚊帳のなかで、並んで寝た。ゴザの上にSさんはお母さんお手製の布団を、私は今回のために新調してくれたというやや大きめの市販の布団を敷いて…。もぉ〜、私は板の間にシュラフでも寝られるって言ったのに、わざわざ買うなんて〜 (i_i)
誰も見てないすきに (!) 試しに手作り布団に身を横たえると、綿の詰まり具合がちょうどよく、市販の布団よりずっと寝心地が良いではないの。しかしそんなことは、もちろん言えないのだった。
手作りのゴザもいっぱいあった。使用中のものが6、7枚、新しいストックが丸められた状態でひとかたまり。このゴザは実に便利だ。どこにでも昼寝スペース、雑談スペース、食事スペースを作ることができる。
使い終われば、家の手すりなどにかけて干しておけばかざばらない(そういえば、ゴザを片づけると、すかさずSさんのお母さんがほうきで床をはいていた)。
こうしてSさん宅(イサーンの各家庭)では、気楽に大勢の客を呼び、あるいは呼ばなくても客の方から押し寄せ、にぎやかに過ごすのが好きなようだ。
食事は親世代と子ども世代で別々にとることもあるようだが、2世代が一同に介しても良い雰囲気で、笑いが絶えない。今の日本にはあんまりない光景かもしれない。
子ども世代は、寝具もゴザも自分では作らなくはなったものの、大勢で食事をともにするのを好むのは、この先も変わらなさそうに思えた。