原題の「Our Daily Bread」の方が邦題よりもぴったりくる気がした。
邦題では、食べるとは動植物の「いのち」をいただくこと、ととらえて終わってしまいそうだから…。
DVD特典の監督インタビューによると、この映画を作ろうと思ったきっかけは、ヨーロッパである時食品の価格が下がったこと、食品を大量に余らせて廃棄したことだったという。
映画に映し出される食糧の生まれる風景は実際、農業、漁業や畜産業というより工業の現場のようだった。
機械化して大量に「製造」される食糧のうち、どれだけが人間の口に入り、どれだけが残飯となるのだろう。
製造現場の人は、殺伐とした作業を淡々とこなし、初めて見る人ならいろいろな意味で食欲を失いそうな光景に慣れきって、休憩時には当然のように食事をとる。
いとも簡単に食糧調達ができる環境を支えている人の存在を、今さらながらに思い知った。
この食糧システムはどこか間違っているのではないか、という疑問と、自分の食べているものを知らなすぎる反省で、いっぱいになった。
監督の、肉を食べる人は本来自分で屠畜してしかるべき、という言葉も、まさにその通りだと思う。
こちらは同じタイトルの本だけど、映画と直接関係はない。
自分の知らない肉の世界を知りたくて読んだら、前半は品川の食肉市場での牛や豚について書かれていたけど、後半の内容は差別問題に発展していた。
子ども向けに書かれた文字数の少ない本とはいえ、前後半を通して濃い内容で、読み応え十分だった。