夕方ノンカイの鉄道駅に行き、翌日の乗車券を買おうとしたが、売ってもらえなかった。「明日来なさい、席はいっぱいあるから」。
仕方ないので、翌日、発車1時間前に再び駅の窓口に立つ。「1等車、ないですよね」との問いに返ってきたのは「3等車だけ」という、つれないひとことだった。
ノンカイからコンケーンまで、180km ・100円・3等車・3時間の旅をする。
車窓の風景は、青々としたラオスのそれとはちがい、"南国の冬" の色合いだった。
田んぼも収穫が終わって土を休ませているところらしく、どこか寒々しい。
しかしところどころで、草を食む牛たちの、のんびりした景色も楽しめた。
思えばこの1週間、放牧された牛たちを連日見ていたなぁ〜。
実は列車の旅には、ひとつ期待するものがあった。地平線まで届くさとうきび畑の風景だ。ずっと前からタイにあってもおかしくない、と思い続けてきた、風になびく一面のさとうきび…。
しかし残念ながら、小さなさとうきび畑はいくつもあるけれど、視界いっぱに広がるようなものには出会えなかった。さとうきびに限らず、どんな農作物でもそうだ。タイでは農業の経営スタイルのためか、植民地になったことのない国だからなのか、とにかく、単一作物を育てている巨大な畑というのは存在しないのかもしれない。
また、今回タイのいなかを見て再確認したのは、タイは国の隅々まで人の手が行き渡っているということだった。国道には街路樹が植えられ、国旗や王様の旗が掲げられ、整備の行き届いた感じを受ける。
ただたまに、地主に見捨てられたような、荒れ放題の土地が一区画だけあったり(これはバンコクにもよくある)、事実上ゴミ捨て放題になった場所があったりするけれど、それ以外は、概ねきれいに整えられていると感じた。
縦に横に大揺れするシートでお尻が痛くなってきたころ、列車がコンケーン駅に滑り込む。斜め後に座っていたお坊さんが「コンケーンだよ」とわざわざ教えに来てくれた。