いやー、すごい。言葉の専門家ともなると「させていただく」という言い方について、50ページもの文章にしてしまうんだ、と感心した。
この表現のほか「〜してもらっていいですか」「ご紹介してください」などの言い方、「ら抜き」「を入れ」「さ入れ」「御方様」などなど、最近よく耳にする日本語について解説されている。
改めて、日本語ってむずかしい〜! と身につまされた。
本の後半の、敬語やコミュニケーションについての考察も、とてもおもしろい。
特に著者が教鞭をとる大学での、日本人学生の言動や、外国人学生のもつ日本人とはちがった視点などが印象に残った。
日頃から感じるのだが、テレビで話されている言葉をモデルとする学生さんや若い人の言葉が、時代とともに変化していくのは無理からぬことと思う。
また、若くなくても言葉に関心を持たない人にとっては、著者の分析に耐えるような正しい言葉を操るのもむずかしそうだ(私にもできません…)。
敬語は間違ってるけど、話の内容は良い、とか、言葉使いはどこかおかしいけど、人間的に尊敬できる、など、正しい言葉使いがすべてではないのは言わずもがな。
ただ、テレビなどで発言する機会をもつ、知性派とされる人々にはがんばってもらいたいと願うのだ。
はやりの表現を吟味せずに取り入れたり、現時点での文法的に間違った言葉を平気で使うなどは、世の中に影響力のある人物として慎むべきことだと思うのだけれど。
言葉が移り変わっていくのは自然なこととしても、無批判に流れに任せるのではなく、もう少し振り返ったり議論したりしながら、自分たちの日本語を大切にできたらいいな、と思う。