童話『北風と太陽』を思い浮かべた。
戦争の凄惨さを書き連ねたり、声高に反戦が叫ばれるよりも、戦時中でも仲間を思いやり合った兵隊たちや寛容なビルマ人が描かれたり、一兵士の思いが淡々と書かれている方が、もう戦争を繰り返してはいけない、と素直に心に刻まれるのかもしれない。
映画を観て、原作の反戦の温度を知りたくなって読んだ本書。想像以上に高温と感じたのは、戦後2年の作品なのだから当然だろうか。
戦争、平和、人生への願いや思いは、まだ敗戦の生々しかったであろう時期に書かれたにもかかわらず、戦後60年以上経った今でも違和感なく受け取ることができ、感慨深い。
また、映画では細かくとらえにくかった、主人公をはじめ、登場人物の気持、熱帯の自然や季節感、仏教徒としてのビルマ人のあり方なども伝わってきた。
改めてレベルの高い児童文学だと感じるが、子どもの本としてしまうのはもったいない。またいつか読み返してみようと思う。