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『越後のBaちゃんベトナムへ行く』

『越後のBaちゃんベトナムへ行く』_c0161046_12435217.jpg 著者が長年暮らすハノイに、82歳で認知症のお母上(Baちゃん)を呼び寄せ、共に暮らす日々が綴られている。

 以前、朝日新聞にこの著者の同じ内容のコラムが掲載されていて、興味深く読んだが、短くまとめてあったので、「Baちゃん」のキャラクターがいまひとつ伝わってこなかった。

 その点本書は、新潟弁の「Baちゃん」のセリフが満載で、そのひとつひとつにとぼけた味わいがあって、つい頬がゆるんでしまう。

 「こっちは雪が降らんでいいのお」

 「屋根の雪も心配しねで、ほっけんどこでゆっくり休ませてもらってそう」

 「ああ幸せだのぉ。雪掘りの心配もいらねえ。メシの支度もいらねえ。誰に気兼ねもいらねえ。こうして『食っちゃ寝の化けモン』してられるてだが、ほっけ神経が休まるこたぁねぇの。あんまり幸せで・・バチが当たりそうだて」

 豪雪地帯で暮らしてきた働き者の日本女性なのだなー、と感動的ですらある。

 そしてこの「Baちゃん」、ベトナム人とも日本語で渡り合って、仲良しになってしまうのだから頼もしい。

 実際には「Baちゃん」の2度の手術や失踪? 事件、著者の病気など、大小さまざまなハードルが立ちはだかるが、それらの多くは控えめに書かれている。

 また、お年寄りを尊敬しいたわる習慣のあるベトナム人からの手助けは、日本の都会では得られないレベルのものだと思った。

 個人的にもっともずっしりと来たのは、もの心ついた頃から自己主張をしてきた私たち世代の人は、戦前の人である「Baちゃん」のような謙虚なお年寄りになれるのだろうか、ということ。

 きっと無理だろうな。少なくとも、私にはできそうにない。


 *『越後のBaちゃんベトナムへ行く』 小松みゆき・著 2B企画
  2007年6月刊 B6判 272頁 1400円 (本体\1334)
by chicorycafe | 2009-05-26 14:56 | ◆本 〜 アジア